労働者について
労基法上の「労働者」とは、「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法9条)を指します。「使用される者」とは、労務を提供し、使用者の指揮命令を受けて支配従属下に働く者であり、例えば、他人から「これをせよ。」と支配下において指図を受けて働く者のことをいいます。「賃金を支払われる者」とは、現実の労務の提供に対し、その対価として賃金を請求できる地位にある者のことをいいます。 労基法上の「労働者」にあたる者は、 労基法及びその関連法である労働安全衛生法・労働保険法等の適用対象となり、これらの労働者保護法規により保護されます。
取締役などの役員が、部長や工場長等を兼任している場合(従業員兼務役員)であっても、「役員」であることから直ちに労働者性が否定される訳ではありません。従業員兼務役員であっても、指揮命令を受けて働くという従業員としての業務を行うので、「労働者」にあたります。例えば、専務取締役の肩書きを有している者であっても、会社代表者の指揮命令の下で労務を提供しその対償として「給料」の支払いを受けている実態がある場合には、従業員退職金規定が適用されるとした裁判例があります(最判平成7年2月9日)。
いわゆる一人親方(例えば、大工)は、工務店から指揮命令を受けていたとは評価できず、報酬は仕事の完成に対して支払われたものであり、自ら道具を持ち込んでいることなどから、「労働者」にあたりません(最判平成19年6月28日)。
事業を手伝ってもらうために臨時に一人だけ、し かもわずか一日雇った学生アルバイトであっても、その事業のために仕事をしている間は「労働者」にあたります。例えば、もし学生アルバイトが、商品の配達中に交通事故を起こした場合には、労災保険法の適用があり、その保護が受けられます。