労働契約に関するQ&A

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働く条件について


労働時間・休憩・休日・賃金等の条件といった「働く条件」(=労働条件)は、原則として,労働者(=働く人)と使用者(=雇用する人,会社)との個別の合意である「労働契約」によって決められます。ですので,これを変更する場合も労働者と使用者の合意によって変わることになります。

労働者と使用者の合意によって「働く条件」が決まるとはいっても、両者には経済的な地位・立場や情報量に格差があるので立場の強い使用者が労働者に不利な契約を押しつけたり、法律の知識のない労働者が不利な労働条件で契約をしたりすることがないように、合意内容は、法律や労働組合との約束(=労働協約)、使用者の一般的な定め(=就業規則)によって最低限の基準が規律されています。

使用者から一方的に不利益な契約を労働者が結ばされないようになっています。つまり労働契約は、労働基準法・雇用機会均等法・最低賃金法・労働安全衛生法などの労働者保護法規の規制を受け、法律の基準に達しない労働契約は無効となり、法律の基準が労働条件となります。また,労働協約に反する労働契約も無効となり、労働協約の内容が労働条件となります。

一定数以上の労働者を抱える使用者には,就業規 則を定める義務が課されており、①その内容が合理的で②労働者に周知されている場合(=いつでも見られる状態にある場合)には、就業規則の内容が労働条件となります。しかし労働者毎の個別の契約で、就業規則を超えて労働者に有利な契約を締結した場合は、その内容が労働条件となります。

労働時間・休憩・休日・賃金等の条件といった「働く条件」(=労働条件)は、原則として,労働者(=働く人)と使用者(=雇用する人・会社)との個別の合意である「労働契約」によって決められます。ですので、これを変更する場合も労働者と使用者の合意によって変わることになります。

これらの規律の関係は、労働者に不利益な場合には「法令(強行法規)>労働協約>就業規則」となり、労働者に有利な場合には、労働協約や個別の労働契約が労働条件となります。

労働条件は、採用等の際に労働者に対する書面による明示が使用者に義務付けられています。求人票や求人広告は直接労働条件となるものではありませんが、使用者の説明内容によってはその内容が労働条件となる場合も考えられます。

採用内定について


企業によっては採用手続において、実際に働き始める前にいわゆる「(採用)内定」を出すことがあります。会社による内定の通知は、労働契約の締結にほかなりませんが、一定期間経過後に働き始めるという内容のため、働き始める前に内定取消事由が生じた場合には解約できるという契約です。

いわゆる「内々定」は,その後の内定を予定するものですが、通知を受けた時の状況や通知内容等に鑑みて、内定と同様に考えることができる場合があります。

上記のとおり内定は使用者の解約権を含むものですが、既に労働契約が成立していることは紛れもない事実です。そこで内定取消は、使用者が「採用内定当時知らず、また知ることができない」事実が後に判明し、しかもそれにより採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」場合に限られ、このような場合に当たらない内定取消は無効となります(大日本印刷事件最高裁判決)。例えば大学を卒業できなかったとか、業務に堪えられないほどの体の異常が内定後に判明したなどです。

不況などの経済的な理由も、採用を決めておきながら数ヶ月程度で撤回するのですから、内定当時に使用者が予測できない急激な経営悪化などの事情がない限り、内定取消の要件を充たしません。なお、使用者の都合で働き始める時期を遅らせた場合、労働者はその理由に応じてその間の賃金の一定割合或いは全額を使用者に請求することができます。

これらの内定取消が違法な場合、労働基準監督署からの指導・勧告・労働局の斡旋・仮処分・労働審判の申立や訴訟提起などの裁判手続を利用することによって、今後も働き続けられる立場にあることの確認や賃金・損害賠償などを請求することができます。

試用期間について


入社後の一定期間を「試用」・「見習」期間として、その後の本採用までに労働者の不適格性を理由に労働契約を解約する場合があります。試用期間の定めは、使用者が採用時に労働者の能力等を十分な資料をもって検討できないことから、一定の検討期間を与える契約です。

試用期間中であることを理由とする解雇・本採用拒否は、「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合」のみに許されます。従って、政治的信条など考え方などの内心の問題だけの理由による解雇は許されませんし、能力不足などの理由も相当期間の教育をしても改善が見込めない場合など、限定的に許されるに過ぎません。

試用期間の長さも、その趣旨に照らして合理的な期間でなければなりませんし、合理的な理由がない限り試用期間の延長は許されません。

これらの本採用拒否が違法な場合、解雇の場合と同様に仮処分申立や訴訟提起など裁判手続によって、今後も働き続けられる地位にあることの確認や賃金・損害賠償などを請求することができます。

採用後2週間を超えた場合、労働者は使用者に対して解雇予告手当を請求できますが、2週間以内の解雇の場合は請求できません(労働基準法21条但書④)。