ブラック企業・ブラックバイトに関するQ&A

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ブラック企業・ブラックバイトについて


一般的には、「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」と言われていますが、我々は、「IT業界、小売、介護、保育など、新興産業全般において、若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む企業」と定義づけています。新興産業の多くの企業では、長期雇用や技能育成を伴う日本的雇用慣行から離れ、若者の技能育成等が行われず、違法かつ過酷な労働を強いるところが多くあります。そのため、正社員として採用された若者も、数年以内に心身をすり減らし、精神疾患の発症や離職に追い込まれることも珍しくありません。

なかなか事前に情報を得ることは難しいですが、とにかくその企業に関する情報を集めることが対策だと思います。以下、情報の見方についてお話しします。まず一つ目は離職率です。ブラック企業の特色として、入社後の離職率が高い、社員の平均年齢が低いということがあります。これらの情報は、四季報などの雑誌で調べることができます。掲載していない企業もありますが、掲載していないこと自体がブラック企業である可能性を示しているとも考えられます。また、二つ目は労働条件です。募集と実際の労働条件が異なっている、給料の一部を残業代見込分とする「固定残業代」が採られている企業などは、ブラック企業の可能性があります。その他、その企業で労災事故や過労死・過労自殺が起こっているなどの情報をインターネット等で得たり、そこで勤務していた労働者からの情報などをインターンシップした先輩から聞いたり、インターネット・SNS等の書き込み情報を活用するなどの方法が考えられます。

他のページなども参考に法的な措置を採る、労働組合に加入して企業と対峙するなどが考えられます。ただし、自分の健康・生命が一番大切です。どうしても耐えられないようであれば、休職するもしくは退職した上で、弁護士に相談するなどして対応を考えましょう。

ブラックバイトとは、企業が正社員の代替として、学生アルバイトに過重な責任を与え、労基法などに反する違法な働かせ方をしていることをいいます。飲食店や学習塾など、アルバイトが店舗における基幹的な業務を担っている職場において、学校の試験や授業があっても休ませてもらえない、皿を割ったり、レジのお金が合わなかったりすると、「罰金」として給料から天引きされる、辞めさせてもらえないなどの例が報告されています。

賃金(=給料)は、①月1回以上、②貨幣で、③全額支払わなければならないと決められています(労基法24条)。従って、使用者が一方的に労働者から賃金から天引きすることは許されません。仮に、労働者が使用者の言うことに逆らえず、同意によるものだとされたとしても、その同意は、労働者の意思に基づくものであると合理的に認められる客観的な根拠が必要であり、単に文句を言わなかった、やむを得ず一筆書かされたなどの状況では、同意に基づく天引きは認められません。

また、通常は、皿を割った、レジのお金が合わないなどの理由では、通常労働者に責任を負わせることもできません。使用者(=企業)は、労働者の労務の提供(=労働力)によって、利益を得ている立場にあります。従って、労働に伴って通常生じるミスに基づく経済的な不利益は、使用者が責任を負うべきと考えられるからです。従って、労働者が責任を負うのは、わざと備品類を壊した場合(故意)、何度注意しても繰り返し備品を壊すなど最低限の注意すらしなかった場合(重過失)に限られ、その責任も使用者との関係で、相当な範囲に限られるものというべきです。

労働契約は労働者・使用者の対等な合意に基づいて成立します。従って、学生アルバイトである以上、学業のためにシフト等に入れないことは織り込み済みですので、大学の試験等を理由とする休暇は許されるものというべきです。また、アルバイトであっても、一定の勤務時間・期間があれば、年次有給休暇も認められます。

なお、退職に関して、労働者は、使用者に対して2週間前に退職の意思を示せば、有効に労働契約を解約することができます。その際にも、あまりに直前の告知であり、かつ、辞めた労働者に与えられていた業務の内容・性質等から、どうやっても営業に支障を来すなどの事情のない限り、使用者に対しての責任を負うものでもありません。

よって、他のアルバイトを連れてこなかったとしても、辞めることはできるし、何らの責任も負わないといえるでしょう。

ブラックバイトであっても、通常の労働者と同じ法律が適用されます。従って、労働基準監督署から是正指導・勧告を出してもらうこともできますし、弁護士を通じて、交渉・裁判などを行うこともできます。また、最近は、ブラックバイトユニオンなど、学生アルバイトが入れる労働組合も組織されています。

パワハラ・セクハラについて

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。犯罪にあたるものからマナー違反に近いものまでを含む幅広い概念ですので、このパワハラの概念に該当するからといって、直ちに民法上の不法行為が成立することにはならず、個々の事案ごとに民法上の不法行為にあたるか否かの検討が必要となります。

セクシュアルハラスメントは、一般的には、「職場における相手方の意に反する性的な言動」などと定義されます。

また、使用者は、均等法により、セクハラの防止措置をとる義務を負っています。ここでのセクハラとは、「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること(対価型セクハラ)」、および「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動によりルお堂者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること(環境型セクハラ)」をいいます。

セクハラも、この概念に該当するからといって、直ちに民法上の不法行為が成立することにはなりません。パワハラ同様、個々の事案ごとに民法上の不法行為にあたるか否かの検討が必要となります。

パワハラやセクハラが民法上の不法行為にあたる場合、被害者のとり得る法的手段としては、①加害者や使用者に対して債務不履行(安全配慮義務違反)や不法行為に基づく損害賠償責任を追及することなどが考えられます。

法的手段によらずに、会社内に設置された公益通報窓口などを利用して、会社に対してパワハラ・セクハラの事実を報告し、上司の異動などの職場環境の改善を申入れるということから始めるのも一つの手段ですが、ブラック企業の場合、会社ぐるみでこのような手法を採っていることも多く、もしパワハラ、セクハラと感じたら、すぐに労働組合や弁護士に相談しましょう。

なお、パワハラ、セクハラの事実を証明する手段として、できる限り、日記、メモ、メール、会話録音などの客観的な証拠を残しておくようにしましょう。

詐欺求人について

求人票や求人広告は直接労働条件となるものではありませんが、使用者の説明内容によってはその内容が労働条件となる場合も考えられます。

契約書を作成しないまま勤務を開始した後に、求人票や求人広告の記載とは異なる労働条件であることが判明した場合、求人票や求人広告どおりの労働条件での契約の履行を会社に請求できる場合があります。

一方、求人票や求人広告とは異なる労働条件で契約書を作成してしまった場合には、当該契約書の無効を主張できるか検討する必要があります。

詳しくは、労働ホットラインで弁護士にご相談ください。